この記事では、「千種区南明町の家」2階の間取りを解説します。
●廊下がほとんどない間取り
土地の解説記事でも少し触れましたが、土地と建物の質、どちらも妥協せずに無駄な予算の上昇を抑える為には、敷地面積も建物の床面積も、1坪たりとも無駄にする事はできません。
廊下や、何に使われているのかよくわからない曖昧な空間をできるだけ少なくし、1坪に価値を凝縮するような設計をする事が重要です。
「できている事・実現している事」が同じであれば、土地の広さは1坪でも少ないほうが良いです。
「できている事・実現している事」が同じであれば、床面積が1坪でも少ない間取りのほうが優秀な間取りだと考えています。
「千種区南明町の家」には、廊下がほとんどありません。
延べ床面積を増やさずに、いかに収納や居室などの居住空間を充実させるか。
その事をかなり意識しながら間取りを組み立てています。
2階のリビングフロアにも、廊下がありません。
敷地の建ぺい率をギリギリまで使い、かつ、床面積を最大限収納と居住区間に割り当てる事によって、30坪以下の敷地面積でありながらも、20畳弱のゆとりのあるリビング空間を実現しています。
●横幅1.8mのダイニングテーブルをセンター配置できるゆとりのあるダイニングルーム
↑ 「千種区南明町の家」リビングよりダイニング方面を見る。
ダイニングルームには、ゆとりのある大きさのダイニングテーブルを置きたい派ですが、せっかく大きなテーブルを置くのなら、窮屈な配置になってしまうのは避けたいです。
ゆとりのある大きさのテーブルを、ゆとりを持って配置したい。
具体的には、横幅1.8mのダイニングテーブルを、テーブルのまわりを回遊できるセンター配置が可能な設計にしました。
大きなダイニングテーブルはいい事がたくさんあります。
・家族だけで使う時は広く使える。
・作業や読書、勉強などをしている途中でも、食事のスペースが十分にある。
・誰か来ても広く使える。最大8人まで使える。
・クリスマスやお正月など、食卓にいつもよりも料理が並ぶ特別な日にも余裕を持って使える。
・テーブルの上を飾っても、十分に余裕がある。
・インテリアとしての存在感があり、大きな照明器具と組み合わせられる。
ぜひとも、大きめのテーブルをレイアウトして使って下さい。
●ダイニングテーブル脇にある収納とカウンター
↑ 「千種区南明町の家」ダイニングカウンター
物が置きやすい場所には、物が勝手に集まってきます。
その代表的な場所がダイニングテーブル。
放っておけばテーブルの上に物が集まり、食事の前にテーブルの上を片付けなければいけない状況は多いのではないでしょうか?
その時、ダイニングテーブルのすぐ脇に収納があれば便利ではありませんか?
この扉付きの隠せる収納は、郵便物や書類・文房具・レシート・サプリメントや薬・メガネや腕時計・化粧品類・子供の勉強用具や遊び道具など、ダイニングテーブルの上に集まりがちな物を収納する場所として計画されています。
カウンターの上には、照明器具やフラワーベース・アロマディフューザーなど、インテリアのディスプレイスペースとしてあまり物を置かずに使っていましたが、テーブルの上をすぐに片付けたい時のとりあえずの物の移動先として、人数が多い時に食材や飲み物・食器を置いてダイニングテーブルの予備スペースとして使えるのでとても便利でした。
●ダイニングチェアに座ったまま手が届く、ニッチ収納
↑ 「千種区南明町の家」ダイニングテーブルから座ったまま手が届く場所にあるニッチ収納。
物があつまりがちなダイニングテーブルの上をすっきり片付くような設計にしたい。
そう思い、ダイニングテーブル脇に扉付きのカウンター収納を計画したというのが前項のお話ですが、ダイニングテーブルまわりの物の中には、使用頻度が高くすぐ手が届く場所に置いておきたい物があります。
例えば、ボックスティッシュやウェットティッシュ(アルコールの除菌タイプとノンアルコールのもの)・ハンドクリームやリップスティック等のよく使う化粧品類、塩や醤油などの調味料です。
使いたい時にすぐ手が届く場所に置いておきたい物ですが、テーブルの上に置きっぱなしにはしたくありません。
これらの物を置いておける場所として、キッチンカウンターの下部にニッチ収納を計画しています。
このニッチ収納内にはコンセントがある為、充電スペースとして使う事も可能です。
特別な努力や収納テクニックを用いなくとも、納まるべき場所に自然と物が納まり、使いやすく仕舞いやすい、自然に使えて自然に片付く。そのような間取りが自分の理想です。
●機能性を重視して造られたキッチン
↑ 「千種区南明町の家」手元が隠れてスッキリ見えるキッチン。
特別な努力やテクニックがなくとも自然に使えて自然に片付く工夫はキッチンにもいくつかあります。
まずはキッチンの天板と手元が隠れるように設計されたカウンターです。
このカウンターはキッチンの天板から20センチの高さの立ち上がりがあり、それによってリビング・ダイニングから水切りカゴが見えなくなります。
キッチンの天板には、水切りカゴの他にも物が置かれている状態が自然な状態と考えています。
どのような状況にあっても、リビングやダイニングからはすっきりと片付いた印象になるようにカウンターの高さが設計されています。
天板より20センチの高さにカウンターがある事によるメリットは手元が隠れる事だけではありません。
ある時は調理台の延長として調理器具や食材や食器を置いて。
ある時は出来上がった料理の配膳用カウンターとして。
食事の時には、テーブルの上の空いたグラスやお皿を置いておくカウンターとして。
多目的な使い方ができるように、カウンターには奥行きを持たせてあります。
また、カウンターに奥行きを持たせる事によって、ダイニング側から座ったまま手が届くニッチ収納を計画できています。
もちろん、20センチの立ち上がりとその奥行きによって、キッチンからダイニング側への水はねを軽減できるという役割もあります。
↑ 「千種区南明町の家」キッチンハンガーレール。
さらに、20センチの立ち上がり部分に収納用ハンガーレールを設置しています。
キッチンペーパーや使用頻度の高い調味料や台拭きなどをすぐ手が届く位置にセッティングできる事はもちろん、キッチン天板から浮かせて収納する事で、天板の上の物を移動しなくてもサッと拭き掃除ができる設計になっています。
良く使うものはすぐ使えるように出しっぱなしになるのは、自然な状態だと思います。
生活感をなくす為に、水切りカゴを無くすというのもおかしな話だと思います。
住宅の本質は生活そのものだと思います。
特別な努力を必要としない、普通に生活していれば自然に片付く。
そんな家や間取りが自分にとっては理想です。
●収納量豊富な背面収納
↑ 「千種区南明町の家」キッチン背面収納
まず、冷蔵庫と背面収納との間に壁を立ち上げる事で、冷蔵庫上のスペースを収納として無駄なく活用できるようになっています。
冷蔵庫上には2段の棚板が設置してあり、すき焼き用の鍋だったり、ワインクーラーだったり、たこ焼きプレートだったり、行事や来客の時、使用頻度が低いものを収納する場所として活用しています。
収納量が増えるだけでなく、冷蔵庫の側面が隠れる事によって、見た目が相当にスッキリします。なぜなら、冷蔵庫や洗濯機等の家電製品は、側面まで見栄えが良くなるように配慮されて作られていないからです。
背面収納は造作です。寸法を現地で合わせて制作していますので、三方に余計な隙間がなく、スッキリ納まっています。
隙間がないという事は、お手入れのしやすさにも繋がります。
複数のゴミ箱置き場を設置し、必要なゴミ箱にすぐアクセスできるようになっています。
カウンターの上はオープンに使えるよう、カウンター下に家電が収納できるようになっています。
カウンター上部には吊り戸棚(String シェルフ)が設置されています。
扉付きの食器収納のほかに、使用頻度の高いマグカップやグラスをさっと取り出してすぐに仕舞えるように、オープン棚が組み込まれています。
背面収納の奥にある小さな窓は、キッチンの換気扇をONにしている時に外気を取り込む為の窓です。
ここから外気を取り込めば、ダイニングやリビングの空調された空気はそのままに、キッチン内で給排気を完結できます。
●ゴミを置く場所としての勝手口バルコニー
可燃・プラ資源・不燃・紙・ペットボトル・空き瓶・空き缶
これだけの種類のごみを仕分けしながら整理する事は、キッチンのスペースだけでは困難な事がほとんど。
使用頻度の高い可燃ごみとプラ資源のごみ箱をキッチンの背面に配置し、他のごみ箱はキッチンに隣接するバルコニーに配置する事で、使い勝手を犠牲にせず、キッチンの背面スペースを有効に活用し、かつ、整理された空間を実現しています。
においが気になる生ごみや、口を縛って出すばかりになった可燃やプラ資源のごみ袋を一時的に置いて置く場所としても使えます。
キッチンのすぐ横にある便利なスペースです。
何より、次の項で説明するウッドデッキのバルコニーに物を何も置かなくても良いようにしたかったのです。
●リビングとダイニングに隣接するウッドデッキのバルコニー
このバルコニーがあるおかげで、生活が豊かになりました。
陽当たりがとても良いこのバルコニーは、朝起きて日光を浴び、目を覚ますのに最適でした。
お風呂上がりに夜風にあたりながら歯磨きをするのにも気持ちの良い場所でした。
この場所で食事をする事も多かったです。においが気になる焼肉などをする時はこのバルコニーを使っていました。
リビングに隣接しているので、食事をしながらテレビを見る事もできます。
キッチンにも隣接しているので、食器や食材の上げ下げや準備や後片付けも苦になりません。
上部はバルコニーで屋根がかかっているので雨にも濡れません。
隣家や道路からの視線とは完全に切り離されたこの場所は、リラックスして使えるリビングの延長のような場所でした。春や秋はほんとうに気持ちが良かったです。
目の前に大きな街路樹がある事で、リビングやダイニング・バルコニーからの景観は素晴らしく、便利な街中の立地にも関わらず自然を感じる事ができました。
今は剪定されて寂しい感じになっていますが、時間が経てば枝葉が成長し、環境と景観に彩りを与えてくれるでしょう。
●陽当たりの良さ
ダイニングとキッチンには、南東側に床から天井までの大きなFIX窓があり、午前中はこの窓から陽が差し込みます。
南西側には掃き出し窓があり、午後はこの窓からの光が部屋をしっかり明るくします。
リビングも同様です。南東側と南西側双方に窓があり、どの場所も時間を問わずに明るい、これ以上は望めない恵まれた光環境のLDKだと思っています。