間取りの解説記事1の続きです。
1、南側に2枚の採光窓があるワイドスパンで明るいリビング
土地の解説記事でも触れていますが、この土地を購入した大きな理由のひとつが、ワイドスパンの明るいリビングが造れる事。
南側に2枚の採光窓が設置できる事で、明るいリビングを実現できている事はもちろん大きな特徴。
それ以上に、リビングだけでなくダイニングまで窓際に配置でき、明るい・・これがワイドスパンリビングの大きな魅力です。
この2枚の窓は、電動シャッターを採用しています。
電動シャッターの利点は、カーテンや窓を閉めたままスイッチひとつでシャッターの上げ下げができる事。
シャッターの上げ下げがとても楽なので、少しのお出かけでもシャッターを閉め、防犯性を高めて外出して頂ける事。
また、電動シャッターは上げ下げの音がとても静かです。
2、居心地の良いリビングに必要な照明計画
↑ 「平和公園北の家」
物件の陽当たりの良さとはつまり、お昼間の光環境です。
ミキプランニングでもそうですが、その事を気にする分譲住宅メーカーは多い訳ですが、一方、照明計画には無頓着な物件ばかりな気がします。
照明計画とはつまり、夜の光環境です。個人的には、お昼の陽当たりと同じくらい大切な事だと思っています。
直接的な光、特に白色の光を浴びる事で人間の身体は覚醒するように出来ているようです。ですので、お昼間は太陽の光でお部屋が明るいのがいちばん。
しかし、夜のリビングには、就寝前のくつろぎの時間を過ごすという役割があります。
そのために、白色の光は避け、電球色の照明器具を選択する事は当然ですが、直接的な光を避け、刺激が少ないあかりでなければいけません。
よって、リビングは間接照明が中心の照明計画となっています。
間接照明とはその名の通り、ランプから発せられる光を一度壁や天井でバウンドさせる照明計画です。
光を一度バウンドさせる事によって、角の取れたやさしい光になります。
とはいえ、夜のリビングだからと言って、くつろぐだけでもないでしょう。本を読む時、明るさが欲しい時もあると思います。
そのような時は、折り上げ天井の中央にあるダウンライトを点灯します。
このダウンライトは、光があまり拡散しないタイプのものを選択しています。また、光の向きを自由に変えられる器具です。
設置したテーブルやソファの位置にあわせ、光が欲しい場所に向きを変えてご利用下さい。
3、ダイニングテーブルの上にはペンダントライトを設置できるようにしています。
↑ 「瑞穂公園の家」ダイニングルーム 器具の根本とレールが隠れるように天井にスリットを造作し、その中にレールを設置しています。レールが設置されている範囲であれば、テーブルの位置にあわせて自由に照明器具の位置を変えらえれます。また、数を増やすこともできます。「瑞穂公園西の家2」でも、同じプランを採用しています。
ダイニングルームにシーリングライト・・その提案は少なくとも自分の物件ではしたくないと思っています。
まんべんなくお部屋中を明るくするシーリングライトはとても機能的ですが、食事が主役のダイニングルームには不向きだと思っています。
お部屋の中がまんべんなく明るいという事は明暗差がない均質な光環境という事。
人間の目は、相対的に明るい場所に自然と注目するようにできているようです。
明暗差がない均質なあかりでは、目的とメリハリのない味気ない空間になってしまいます。
主役であるダイニングテーブル上の食事をスポット的に照らすペンダントライトは、食事をするという目的に適した照明で、ダイニングにはやはり似合います。
ミキプランニングの物件は、照明器具は基本的に物件に含まれています。
建築と一体化している間接照明が多いから・・という理由もありますが、照明プランはそもそも作り手側が提案するべきものだと思うのです。
※ここには詳しく書きませんが、ダウンライトひとつとっても、7種類の器具を使い分けています。
ダイニングルームにはペンダントライトをオススメしてこのようなプランにしているのですが、このペンダントライトだけはお住まいになるお客様にご用意頂いています。
ダイニングルームのペンダントライトは、インテリアの雰囲気をすごく大きく左右します。
ですので、ぜひインテリアのお好みやテイストに合わせてダイニングの顔となるお気に入りのランプをセレクトして下さい!
もちろん、ご相談を頂ければ器具のご提案も致します。
4、ダイニングテーブル脇のカウンター
↑ 「相生山駅東の家」 「瑞穂公園西の家2」とほぼ同じ造りです。
ダイニングテーブルの上にはとにかく物が集まってきます。
領収書の束や開封前の郵便物、読みかけの雑誌や新聞・・・食事には関係がないけれども、テーブルの上についつい置いてしまう物も多いはずです。
ダイニングテーブルはそのような物の置き場としては都合が良いのでついつい置いてしまう訳ですが、それらの物の居場所(一時的にでも)が用意されていないと、テーブルの上は片付きません。
ダイニングテーブルは食事をするテーブル。そのまわりを機能的に、スッキリと使って頂けるように一般的なダイニングテーブルと同じくらいの高さである約72センチの高さにカウンターを設置しています。
例えば、ティッシュボックスや調味料入れなど・・・テーブルの上に置きっぱなしにしておくと邪魔になるし美観を損ねるけれども、頻繁に使うものなので、常にテーブルのそばに置いておきたい物の居場所としても最適です。
雑誌類を収納できる奥行があるので、ダイニングテーブルをお子様の勉強スペースにされたい場合、勉強セットなどを置いておく事もできます。
また、棚の上にコンセントが設置してあるため、卓上で調理家電を使う時も、足元をコードが這う事はありません。
コーヒーメーカーやトースターなどの調理家電を設置しても便利です。
育ち盛りのお子様がいる家庭では、ごはんを炊いたら炊飯器ごとこのカウンターの上まで持ってこれば(もしくはカウンターの上で最初から炊いてしまう)、おかわりするたびにキッチンに行く必要もなくなります。
5、リビング学習ができる2人掛けのライブラリースペース
↑ 「瑞穂公園の家」:こちらも、ほぼ同一の造り。
リビングの中でお子様がお勉強できるスペース。もしくは、家族共用のPCスペースや書斎として活用できるライブラリーを設けています。
横幅も広く、テーブルは2人掛けができる長さがあります。
照明器具は本棚の下にテーブルの横幅に合わせて壁スイッチで点灯するタイプのものをあらかじめ計画しました。
この棚下灯を採用した理由は2つあって・・・
まず、2人分の卓上スタンド照明を設置すると、活用できるテーブル上のスペースが狭くなってしまう事。
↓
その点、壁スイッチ点灯の棚下灯であれば照明器具を置く必要はなくなり、テーブルがより広く使えます。
もうひとつの理由は、テーブル上がまんべんなく照らされ、手元に不快な影ができにくい点です。これは、勉強スペースや作業スペースにはとても大切な事です。
ダイニングテーブルをお勉強スペースとして活用するのもアリですが、ダイニングスペースと勉強スペースでは求められる光環境が異なります。
その点、専用スペースであれば目的に沿った最適な照明の計画ができる訳で、より優れた環境を造る事ができます。
造り付けなので、余計な隙間ができないのもポイントです。
壁から壁までぴったり納まったテーブルは、消しゴムや筆記具が転がって裏側に落下・・のような事がありません。
それに、テーブルを支える足もなく、見た目がとてもキレイです。
天井までしっかり空間を活用できるのも、造り付けの特徴。テーブルの上部には本棚が2段造りつけられています。
6、独立型キッチン
↑ 当社施工事例の独立型キッチン:キッチン正面にキッチンペーパーやふきんが収納できるハンガーが設置します。まだまだ活用できそうな壁面スペースが残っています・・。
私は、分譲住宅に求められるのは「誰が使っても使いやすい汎用性の高い間取り」だと思っています。「汎用性の高い間取りは長く快適に生活できる間取りでもあり、資産価値の高い間取りでもある」・・・と考えています。
そうゆう意味で、個人的には分譲住宅でアイランドキッチンを採用する事はありません。アイランドキッチンは誰にとっても使いやすいキッチンではないからです。
舞台のようにLDKの中心に鎮座するアイランドキッチン。キッチンまわりに置かれたモノは「見てほしい」とばかりに主張します。常にキレイに片付けておかないと、生活感を排除したオシャレな空間をイメージしたつもりが、LDK全体が片付いてない落ち着かない印象になってしまいます。
収納がたくさん必要な箇所にも関わらず、吊戸棚も付けられず収納に利用できる壁面も無く、収納を確保する事が難しい・・・
油や水がダイニングのほうまで飛び跳ねて、お掃除も大変・・・
毎日朝も昼も夜も使う場所なのに、常に片付いている状態を求められる訳で、「求められるハードルがかなり高いキッチン」です。
「使う人に覚悟が求められるキッチン」とも言えるでしょう。使う人に「見せる事を楽しむことができるかどうか」・・・も、問われるのではないでしょうか。
逆に、設計をする側には「綿密な計画」が求められるのがアイランドキッチンです。「最小限の労力で、最大限に片付く工夫」が求められる訳です。「なんとなくカッコいいから・・・という理由で採用する事など許されないキッチン」だと思っています。
住まわれる人が決まっている注文住宅では、それらのハードルを乗り超える事もできるでしょう。
しかし、それを分譲住宅で採用しようというのは・・・・つまり、「アイランドキッチンの覚悟」を不特定多数のお客様に対して求めるという事を意味する訳で、それはある意味すごい事だと思う訳です。
分譲住宅や分譲マンションの世界では、「デザイナーズ住宅」・・・と、自ら宣言している物件が最近多いですが、この手の物件はアイランドキッチンやオープンキッチンを設置し、それをキャッチコピーにしている事が多いような気がします。
不特定多数のお客様を対象にする分譲住宅なのに、何の工夫も背景もなくただ置いただけのアイランドキッチンを、お客様に覚悟を求める訳でもなく、イメージを演出する為に計画する。この手の物件は、自分が苦手とするタイプの物件のひとつです。
自分が造りたいのはこれと正反対の物件なんだなぁと、このような物件を見るたびに思うのです。
私の場合、独立型キッチンを採用する場合は必ず扉付きの計画とします。
扉付独立型キッチンの機能的なメリットは下記のように多岐に渡ります。逆に扉が付いていない独立型キッチンでは、独立型の魅力の半分も発揮できません。
1、独立型の魅力はなんといっても、キッチンが多少片付いていなくても気にならない事。
2、どんな時でも扉さえ閉めてしまえば、リビングダイニングから一瞬で生活感を消す事ができます。これはものすごいメリットです。
3、冷蔵庫や炊飯器・電子レンジ等の家電がリビングダイニングから見えません。特に、冷蔵庫を隠すとリビングダイニングは想像以上にスッキリとした空間になります。
4、扉も窓も閉めてキッチン内で換気扇を回せば、キッチンのにおいが外に漏れる事を防げます。密閉されている空間なので空気の流れをコントロールできるのです。キッチンとしてはとてもすばらしい機能です。
5、ましてや、キッチンの水や油がダイニングまで飛ぶなんて事は絶対にありえません・・・。お掃除もキッチンの中だけで完結します。
6、キッチンの扉を閉めてしまえばエアコンや暖房の効率が上がります。使っていない空間も暖める・・・なんて無駄を省くことができます。これも独立型でしか実現できない機能です。
7、それとは逆に、「瑞穂公園西の家2」では、キッチンの足元にも床暖房を設置しているので、扉を閉めて床暖房をONすればキッチンだけを効率よく暖める事ができます。
8、扉がベビーゲートのかわりになって、小さな子供やペットがキッチンに迷いこみません。
9、吊戸棚を取り付けられるのはもちろん、キッチン正面は全部「壁」なので、壁を利用した機能的な収納が可能。(定番の随時利用品ぶら下げ方式)
10、面積をコンパクトに設計できるので、その分リビングの収納量を増やせる。
※今回は、独立型キッチンを選択する事で、リビングにライブラリースペースを計画する事ができています。
そして、これらすべての素晴らしいメリットは独立型でしか実現できません。
機能的な独立型キッチンは個人的に大好きです。ある意味アイランドも独立型もどちらも偏った存在ですが、私個人的には機能性に偏った独立型キッチンが断然好きです。
7、冷蔵庫スペースと背面収納スペースを仕切る壁
洗濯機と洗面台の間を仕切る壁と同じ目的で造っています。
まず、冷蔵庫の上に2段の棚板を渡し、収納として最大限活用する為です。
次に、冷蔵庫と背面収納スペースの間に壁がある事で、冷蔵庫や背面収納の側面が隠れ、シンプルで整った納まりになります。
冷蔵庫のスペースを壁で囲ってしまう訳ですが、日本製であれば十分な大きさの冷蔵庫がちゃんと納まる寸法になっています。
株式会社ミキプランニング
代表取締役 佐藤 幹展