2019年07月05日
コラム
ミキプランニングの土地選びの価値観について。

 

の仕事をもう17年近くやっていますが、うち15年くらいはずっと土地の仕入れ・購入に関わっています。

 

数えきれない程の土地を見て回り、おそらく100件前後の土地を今までに購入しました。

 

そんな仕事をずっと続けていると、自分なりに「いい土地とは何か?」という価値観が熟成されてきます。

 

ノルマに追われる会社勤めの時はそうじゃない事もありましたが、今では自分の価値観に照らし合わせ「心から良い」と思える土地しか買いません。

 

良い土地が出るのはタイミングです。良い土地が出なければ何もしないほうが良いと思っています。

 

売上や運転資金の為に「まぁまぁ」の土地を無理に仕入れる。そんな必要がないスリムでコンパクトな体制で仕事をしています。

 

※関連記事:大手分譲事業者が商品にこだわり抜く事ができない理由。

 

良い土地とは何かという問いには、さまざまな答えがあると思いますが、そこにあるのは正解・不正解ではなく、価値観の違いです。

 

数えきれない数の物件からひとつの物件を選ぶという作業は、ほとんどのお客様にとって人生の一大プロジェクトだと思います。

 

そんな正解がなく、何が正しいのかわかりづらい迷える物件探しの過程の中で、私自身がお客様に大切にしてほしいと思う事は価値観が一致するかどうか、共感できるかどうかという事です。

 

突き詰めれば、「幸せな」契約とは価値観の一致だと思います。

 

ある意味、物件を決めるというのは、仕事や結婚相手を決めるのと似ていると思います。

 

いずれも人生を左右する重要な決断で、何が正しいのかがわかりづらく、数字や条件だってもちろん大切ですが、それだけで割り切れるものでもありません。

 

ですので、考え方や価値観をお伝えするという事は、条件をお伝えする事よりも大切な事だと思っています。

 

ご自身の価値観がまだ明確でなくても、少なくともプロのほうにはハッキリとした価値観があるはずです。

 

物件探しで大切な事は、造り手の土地選びや家づくりの価値観に共感できるかどうか・・という事だと思います。

 

ですので、このような記事ではできるだけ、物件を造っている私自身の価値観をお伝えできれば・・と思っています。

 

今回は、私自身の土地選びに対する価値観のお話です。

 

 

1、資産価値と利用価値が高く、その下落リスクが低い土地

↑ わかりやすいのは駅が近い物件。ほとんどの人は駅から家が近ければ嬉しいですし、多くの人が欲しがる土地=流動性が高く、資産価値が高い土地です。

 

人口が減少するこれからの時代、不動産の価値は二極化します。

 

価値の高い不動産は「資産」として所有者を助けますが、価値の低い不動産は「負債」として所有者の足を引っ張ります。

 

不動産の資産価値は売却や賃貸しない限り表面化する事はありませんが、いざという時、または、人生の節目。そんな時に、所有している不動産の価値が人生を左右する事もあるでしょう。

 

子育て期を広くて収納がたくさんあり、上下階の音の問題がない一戸建てで過ごし、老後はワンフロアで生活できる駅近の便利なマンションで過ごす。

 

そのような住み替えをする方は多くいらっしゃいます。

 

しかし、住宅ローンを組めるのは30代・40代のうち。子供たちが独立した後の住み替えは、手持ちの現金と不動産だけが頼りです。

 

だからこそ、30年・40年というスパンでライフプランを考えた時、不動産の資産性はとても大切です。

 

ミキプランニングでは・・・

 

・住宅地としての歴史が古く、生活インフラ(交通・スーパーなど生活に必要な商業施設・病院・公園・学校)が充実し、「定着」している事。

・地理的に自然災害(主に水害や地震=地盤)に対するリスクが低い地域である事。

・住宅地としての需要が高く、古い家と新しい家が混在し、街として健全な代謝が繰り返されている事。

 

このようなエリアから物件を選択します。

 

このような特性の地域は、結果として安定した価格で不動産が取引されており、将来的にも資産価値の下落リスクが少ないと言えます。

 

基本的には「名古屋市内東部エリアの旧市街、地下鉄駅徒歩圏」の中から物件を選択しています。

※もちろん、それだけではダメです。

 

また、そのような条件の土地はたいてい資産価値が高いだけでなく利用価値も高いのです。

 

日常生活の中では表面化しない資産価値とは事なり、利用価値の高さは毎日の生活を便利で豊かなものにします。

 

駅や学校、スーパーが近い立地によって、家族全員の何十年という毎日の通勤や通学、お買い物が楽になる事はとても価値がある事だと思います。

 

子育て世代にとっては、大きくて緑がたくさんある公園や図書館などの文化施設が近ければ、子供と過ごす日々の時間がより豊かで充実したものとなるでしょう。それもすごく価値がある事だと思います。

 

 

2、陽当たりの良い家が建つ土地

↑ 採光面にしっかりと陽があたる南向きの土地(足場で覆われているのでわかりにくいですが・・)

 

南向きの土地はやはり陽当たりが良く、明るく気持ちがいい家が建ちます。そして、人気なので資産性も高いです。

 

北向きの土地も、地形と設計次第では明るく、静かで落ち着いた環境の家を建てやすい土地です。

 

西向き・東向きの土地は、基本的に陽当たりが良い家は建てづらいですが、間口が広い土地(なかなかありませんが)であれば明るい家が建てられる事もあります。

 

ミキプランニングでは、陽当たりが悪い土地(明るい家が建てられない土地)は買いません。

 

家の環境は生活の環境そのものと言っても過言ではありません。

 

つまり、家を造る行為はその場所での生活環境を造るという行為です。

 

極端な言い方ですが、陽当たりが悪い土地は根本的に住宅用地として失格なのです。

 

幸福ホルモンとも呼ばれるセロトニンは太陽の光を浴びる事で生成されます。

 

さらに、セロトニンは睡眠ホルモンと呼ばれ、生活のリズムを整える役割を持つメラトニンの原料でもあります。

 

陽当たりが悪く薄暗い環境では心身ともに健康な生活を送る事はできません。それは、科学的にも証明されています。

 

ですので、買っているのは結果的に陽当たりが良く明るい家を建てやすい南向きか北向きの土地がほとんどです。

 

 

3、陽当たりの持続性がある土地

↑ ある注文住宅を受けた時の採光検討図。南向きの土地でしたが、向かいの敷地が割と大きい上に、こちら側に寄って高い建物が建つ可能性がありそうだったので季節ごとの陽当たりを詳しく検討しました。結果、2階建てで吹き抜けを介して採光を確保するプランをお客様は選択しました。

 

今陽当たりが良く明るいだけでは不十分で、陽当たりの良さ・明るさの持続性がある程度予見できる土地でなければダメです。

 

土地を買う時にはいつも、南側の土地の状況をチェックします。

 

いくら南向きの土地であっても、背の高いマンションが近くに建つ可能性がある土地であれば、環境が大きく変化してしまう恐れがあります。

 

北向きの土地であれば、南側隣地との間にどれだけの空きスペースが確保できるかがポイントになります。その距離によっては、建て替えられた建物が3階建ての一般住宅でも環境が激変してしまう恐れがあります。

 

もちろん、こちら側の計画が2階建てか3階建てかにもよります。3階建ての家は、リビングが2階になりますので、陽当たりやその持続性という意味では有利です。

 

良い土地情報が出た時にはまず、周囲の敷地の権利関係を調査した上で、建物の配置プランを作成し、将来的な環境変化のリスクを検討します。

 

将来的に陽がほとんどあたらない家になってしまう可能性が少ない土地=陽当たりの持続性がある程度予見できる土地である事。

 

これは、ミキプランニングが土地を買う上での絶対条件です。

 

 

4、広すぎず、狭すぎない敷地面積

 ↑ 2坪敷地面積が増えても、出来る事はほとんど変わらない。しかし、予算や価格は百万円単位で上昇します。

 

まず、ミキプランニングの場合、土地の上に計画するのはたいていの場合4LDKのお家です。

 

もちろん、部屋が4つあれば良い訳ではありません。

 

狭いリビングは嫌ですし、居室にはそれぞれがきちんと機能する広さと収納が必要です。

 

当然、共有部分にも十分な収納が必要です。可能な限り、玄関まわりには大きな納戸を計画したいです。

 

立地にもよりますが、駐車場は2台分のスペースを確保したいですし、北向きの土地であれば南側に採光スペースを兼ねたお庭が絶対に必要です。

 

この条件を満たす建物を建てるには、3階建てのお家の場合であれば約20坪前半~20坪後半の敷地面積が必要です。

 

低層地域の2階建てであれば40坪は必要です。 

 

逆に言えば、それ以上の広さがあっても活用が難しく、ムダに予算や物件価格を上昇させる原因になります。

 

名古屋市内東部の人気エリアの場合、1坪が80万円~120万円はします。

 

上の図にもあるとおり、土地の面積が2坪変わっても、出来る事はほとんど変わりません。

 

ですが、予算や物件価格は160万円~240万円上昇してしまいます。

 

土地や建物の質を落とす事なく、予算・物件価格を抑える為には、極力ムダのない広さの敷地を選ぶ必要があります。

 

小さすぎるのもまた問題です。

 

外壁メンテナンスの為、足場も掛けられないくらい隣家との隙間が少ない家は家として根本的にダメです。

 

再建築する時に、建てられる家と間取りが著しく限定されるほど狭い土地もダメです。土地の資産価値が大きく損なわれてしまいます。

 

土地や建物の質と予算を最良のバランスで仕上げる為には、選ぶ土地の面積はとても重要な要素です。

 

 

5、バランスの良い土地の間口と奥行き

 

言うまでもなく、適切な大きさの土地であればそれで良い訳ではありません。

 

細長い土地は窓が小さくなり、採光を確保するのが難しくなります。

 

逆に、間口が広すぎる土地は、北向きであれば南側の採光が厳しくなります。

 

環境が良い家を建てる為には、土地の間口と奥行きのバランスはとても重要です。

 

「ムダのない面積の土地」という条件と合わせて「間口と奥行きのバランス」が最適な物件を探そうとすると、あてはまる物件は本当に数が限られます。

 

 

の記事でご紹介した5つの条件すべてを満たす土地は、おそらく100件の土地情報を見ても1つも見つけられません。

 

300件見て1つあるかどうか・・。それくらいの感覚だと思います。よい土地は本当に少ないのです。

 

年間100棟単位で土地を仕入れないといけない大きな組織の会社では、必ず土地の仕入れに妥協が生じます。

 

それを補うために、多大な広告宣伝費を投入したり、たくさんの営業マンを雇用する事で営業力によって販売するという方針を取らざるを得ません。

 

土地探しから建物の企画まで、一貫してプロが造るのが分譲住宅です。

 

だからこそ実現できる最良のバランスとパッケージを提案できてこそ、分譲住宅の価値だと思います。

 

土地について言えば、エンドユーザーが簡単に見つけられるような土地では意味がないのです。

 

つまり、土地の仕入れで妥協をするという事は、既に分譲住宅としての価値を大きく損なっていると思うのです。

 

当社は、提供できる物件数こそ少ないですが、このような価値観に基づいて厳選した土地だけを購入し、物件づくりをしています。

 

株式会社ミキプランニング

代表取締役 佐藤 幹展

 

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