日経ホームビルダーという施工者向けの雑誌の実験データに、非常に興味深いものがありました。
「施工精度」という視点から、品質・強度を科学的に検証している貴重な資料です。
まったく同じ耐震金物を使用していても、
「金物の取り付けの位置が間違っていたら?」
「金物の取り付けに使用する釘の本数が不足していたら?」
「金物の取り付けに使用する釘の種類が異なっていたら?」
すなわち、施工の精度が不十分だったら、建物の強度はいったいどうなってしまうのか??
結論としては、
「どれかひとつでも欠けていたら」本来の性能を発揮できません。
施工の精度が建物の品質に与える影響がいかに大きいか。
そのことが、実験によって科学的に証明されています。
実験1 「釘の長さ」「釘の本数」「取り付け位置」 すべて規定通りで施工された金物。
↑ 柱に対して、上に引き抜く力を与える。これが、規定通りの場合の変形量。
↑ 規定通りの取り付けだと、12.16kNの引き抜き耐力を発揮することができました。
実験2 「釘の本数」「取り付け位置」 は規定通りで、「釘の長さ」のみ規定を満たしていなかった場合。
↑ 金物も大きく変形し、釘も抜け、柱も大きく引き抜かれてしまっています。
↑ 引き抜き耐力は、規定通りの取り付けに比べ、75%程しか発揮できていません。
実験3 「釘の長さ」「取り付け位置」 は規定通りで、「釘の本数」が規定を満たしていなかった場合。
↑ 金物が一部破断してしまい、柱も大きく引き抜けてしまっています。
↑ 引き抜き耐力は、規定通りの取り付けに比べ、64%程しか発揮できていません。
実験4 「釘の長さ」「釘の本数」 は規定通りで、金物の「取り付け位置」が不適切だった場合。
↑ 金物の変形は少ないですが、柱は大きく引き抜けています。
↑ 引き抜き耐力そのものは維持できていますが、適切な施工に比べると、柱が大きく引き抜かれてしまっています。
これらの実験からもわかるように、現場の施工精度が建物の耐震性や品質に与える影響は少なくありません。
いくら耐震等級が高い家でも、現場の施工が不適切であれば無意味です。
しかも、耐震等級の制度は、基本的に現場の検査を伴うものではありません。
設計図面上の計算が等級の基本で、現場の施工精度は等級には無関係なのです。
いくら地震に強い工法を採用していても、現場の施工が不適切であれば、これも無意味です。
2×4工法は地震に強い工法と言われていますが、
「2×4工法だから」というだけで安心とはとても言えないということです。
その他、「地震に強い○○工法」的な広告表現もすべて同様だと私は考えています。
住宅の広告では、そのわかりやすさ故に「等級が3等級!」とか「地震に強い○○工法!」とか、
そのような謳い文句を本当に良く目にしますが、残念ながら、
大原則であるはずの施工の精度がメーカーとお客さんの間で議論されることはあまりないように思えます。
住宅は、職人さんがひとつひとつ手作業を積み重ねて造るものである以上、
結局は、現場のひとつひとつの施工精度の積み重ねが住宅の品質になるのだと私は考えています。
「広告映えするわかりやすさ」はあまりありませんし、ちょっと専門的なお話にもなってしまいますが、
「本当の意味で良い品質の住宅」を提供する為には、「徹底した現場の施工検査を行う事」しかない
と私は思っています。
それが、当社の物件に第三者による施工検査を採用している大きな動機です。
以上、「実験データ」施工精度の違いによる品質の差 でした!!
株式会社ミキプランニング
代表取締役 佐藤 幹展