私の物件では、瑕疵保険による義務検査の他に、住宅検査専門の会社にお願いして施工検査を実施しています。
先日、その検査に立ち会ってきましたので、その様子をお届けしたいと思います。
住宅は、多くの職人さんがひとつひとつ手作業を積み重ねて造り上げる商品です。
なので、ひとつひとつの作業の品質が住宅の品質を決めると思っています。
つまり私は、住宅の品質は「現場の施工の精度」で決まると考えています。
しかし、多くの物件では、「等級」や「工法」を根拠として品質を定義しています。
つまり、耐震等級が高いから地震に強い家である・・とか、断熱等級が高いから高断熱の家である、、という主張です。
また、〇〇工法だから地震に強くて安心・・・という主張です。
それもひとつの価値観であり考え方かもしれませんが、私はその考え方には疑問を持っています。
なぜなら、そこには「施工の精度」という物差しが存在しないからです。
どんなにすばらしい工法でも、どんなに頑丈な仕様で設計しても、現場で正しく施工されていなければ意味がありません。
事実、住宅性能評価制度における等級の取得には、現場の検査を伴わない制度もあります。
現場の検査を伴うものでも、基本的には申請通りの仕様に適合しているかどうかを検査するだけで、施工の精度を検査する訳ではありません。
つまり、施工が雑でも、仕様さえ申請通りになっていても、等級が得られます。
住宅は経験も年齢も違う様々な職人さん達が手作業で造り上げるものですから、「忘れ」や「認識の違い」などが起こらないという前提で家づくりを進めることはできません。
人間の手によって造られる商品だからこそ現場での徹底した施工検査が必要だし、検査を徹底する事でしか住宅の品質を向上させる事はできないというのが、私の品質に対する基本的な考え方です。
具体的には・・・
と、話を始めてしまうととても終わりませんので、「広路小学校西の家」でこれから行われる検査についても、ブログでレポートする予定ですので、その時に詳しく・・・。
そのような思いから、当社では施工精度を向上させる任意の検査にコストをかけています。
参考記事
義務の検査だけでは不十分な理由。
↑基礎配筋検査当日の現場の様子。手前の検査員さんは義務検査の会社であるJIOさん。奥に立っているのが、当社がお願いしている施工検査専門の検査員さん。
義務の検査(法律で定められた瑕疵保険を受けるために必要な検査)でも、基礎の配筋の検査は行います。
ということは、配筋検査では義務検査と任意検査の2つの検査法人による検査が行われる訳です。
しかし、義務の検査が終わった後に任意検査の検査員さんから指摘を受ける事はよくあります。つまり、義務の検査ではそこまで細かく見られていない訳です。
義務の検査なので、1日に検査しなければいけない現場の数も任意検査よりもずっと多いはずです。
それに、義務検査に支払っている金額はほとんどが保証料のような性質なので、義務検査と任意検査では、コストも全然違います。
それらの差は、検査にかける時間になって表れます。
義務検査ではひとつの検査におよそ15分。任意の検査ではひとつの検査に90分から120分かけて検査を行います。
見ている範囲の広さと細かさが全然違います。
今回は、2つの指摘を任意検査の検査員から頂いて、是正しました。
両方とも、義務の検査ではスルーされ、任意検査では指摘を受けています。
施工精度を追求しようと思うと義務の検査だけではいかに不十分なのか、このような時実感します。
同時に、絶対に必要な検査だと強く思うのです。
↑鉄筋の間隔を検査し、記録に残します。
↑鉄筋と鉄筋の継ぎ目が正しく施工されているか検査しています。
↑基礎のコンクリートの下には、土の湿気が床下まで上がってこないように防湿フィルムが施工されます。このフィルムに破れが無いかどうかも検査します。義務検査ではチェックされない項目です。
鉄筋に一部不足があるという指摘があり、監督さんと職人さんがその箇所を確認しています。
↑検査当日は、工務店の監督さんと職人さんも立ち会います。指摘事項はその場で確認し、その場で是正できるものはその場で是正し、是正後の箇所も確認します。
↑本来、紙が貼ってあるすぐ上に鉄筋が必要です。
↑職人さんがその場で是正。
↑白い矢印の箇所に鉄筋が追加されました。
鉄筋の結束忘れがありました。
↑ラベルが貼ってある箇所には、鉄筋と鉄筋の結束が必要です。
↑指摘を受け、ただちに現場で是正。
↑結束された後の写真。
是正の指摘があった箇所は、指摘の理由とどう是正したのかというコメントと、是正前と是正後の写真を記録に残します。
丁寧に現場を検査する任意検査ならではの細やかなアドバイス
これは指摘事項ではありませんが、非常に細やかなアドバイスを頂きました。
基礎を施工する時には、鉄筋を組んだ後、どうしても組んだ鉄筋の上に職人さん達が乗って作業する事になります。検査当日も、私も含め、検査員さんも組んだ後の鉄筋に乗って検査します。
↑外周部はともかく、中央部では人の重みで鉄筋が下がってしまう事があります。
↑白いマーカーは、基礎のコンクリートをここまで打つという印です。白いマーカーを打ってから、鉄筋の上に人が乗り少し下がっているので、白いマーカー部までしかコンクリートを打たないと基礎の厚みが設計よりも薄くなってしまうので、白いマーカーの上にある黒いマーカーまでコンクリートを打つようにしてくださいという指摘です。
このような先手を打つアドバイスは義務の検査では絶対に受けられません。
逆に、このようなアドバイスをもらい、現場の施工品質を向上させる為に任意検査を導入しているのです。
さて、現場ではこれから、土台が伏せ終わったタイミング・構造が組みあがったタイミング・断熱・防水、、と検査は続きます。
私も検査の日は可能な限りスケジュールを調整し、立ち会うようにしています。
またこのような形でみなさんにレポートできればと思っています。
株式会社ミキプランニング
代表取締役 佐藤 幹展